遺産相続というものは、相続をする人たちの個人個人の思惑が複雑に絡み合うことで解決することが難しくなることがあります。また、法律的な問題も相まって当事者同士が話し合うだけでは解決できないこともあります。
そういったことになる前に利用していただきたいのが、遺言です。遺言といっても、口頭で残しても法律的な効果はありません。遺言は様式行為といいまして、やり方が民法で決まっています。その決まったやりかたでやらなければ、効果がないのです。
たとえば、自筆証書遺言という方式があります。この方式で遺言を遺す場合、全文を自署しなければいけません。また、必ずしも実印でなくてもかまいませんが、押印をする必要があります。そして、大切なのが日付の記載です。遺言は、複数あってその内容が抵触している場合、つまり内容の違う部分がある場合には、後の日付のものが有効とされます。したがって、必ず日付がなければいけないのです。判例で、何年何月吉日としか記載がない遺言書が無効であると判断されたものがあります。
また、秘密証書遺言という方式もあります。こちらは、自筆証書遺言の場合とは違い、全文を自署する必要はありません。署名押印をして封印をした遺言の封書を公証人及び証人二人に提出して、氏名・住所等を申述し、その封紙上に遺言者と公証人、証人二人が署名押印をすることで成立します。遺言の内容を秘密にしておくことができるのが特徴です。
遺言については、専門家によるセミナーがよく行われています。これは、相続や遺言に対する問題を、司法書士や税理士あるいは弁護士などに相談することで解決への糸口を教えてもらうものです。
相続の問題というものは、その問題の内容によって専門とする職業も変わってくるので、自分で相談相手を決めるよりもまずさまざまな専門家が共催している相続相談に行って、専門の人に教えを乞うのが正しい形だと思います。
相続税対策や税務申告については税理士に相談しましょう。遺産分割協議についての相談、寄与分や特別受益については弁護士に相談するべきです。遺産の中に不動産があって、所有権移転登記についての相談であれば、司法書士に相談しましょう。
相談窓口の中には、平日の夜にやっていたり休日も行っているところもあるので平日の昼間は仕事で手が離せない人にとっても相談しやすいものとなっています。
さらに、相談料が無料のところもあり費用をなるべく抑えたい人にも便利なものでしょう。

相続の相談といいますと、通常は相続が発生してからされることが多いかと思います。
よくあるのが、遺産分割協議がまとまらない、などというご相談です。遺産分割協議がどうしてもまとまらない場合、家庭裁判所に調停の申立をして、家事審判官と調停委員からなる委員会の仲介によって、相続人が話し合いをすることになります。

しかし、いくら家庭裁判所が争点の整理や各種提案をしてくれたとしても、まとまらないこともあります。その場合、調停は不成立となって終了し、当然に審判手続きへと移行していきます。こうなると、円満な解決というよりも、争いの果てに誰も納得できないような決着となることが多いです。

このようなことを防ぐためには、相続発生前に対策することが必要なこともあります。特に、相続財産がわけにくいもの(たとえば、土地建物やマンションなど)である場合には、争いとなることが多いので、対策しておいた方がよいでしょう。具体的に、どのようなことが考えられるかといいますと、遺言を残すという方法です。相続人の遺産分割協議ではなかなか合意に達することが難しくても、遺言に書かれていれば、スムーズに進むことが多いのです。

遺言の作成にあたっては、遺留分に配慮することが大切です。遺留分と言うのは、相続人が最低限相続できる割合のことで、兄弟姉妹以外のすべての相続人が遺留分権を有しています。これを侵害するような遺言を残してしまうと、遺留分を侵害された相続人から、他の相続人に対して遺留分減殺請求がされることもあります。こうなっては、何のために遺言を残したかわからなくなってしまいます。

遺言には、「付言事項」と言いまして、法的に効力がないことも付け加えることが可能です。たとえば、「相続人はみんな仲良く暮らして下さい」などというような希望を書いてもいいのです。ここに、遺言の趣旨を説明すると共に、「遺留分減殺請求はなるべくせず、遺言内容どおりに相続してください」というように書いておけば、法的に遺留分減殺を防ぐということはできないのですが、心理的には、遺留分減殺をしづらい状況が生まれるでしょう。

遺言以外にも、生命保険を活用する方法もあります。相続時に遺産を平等にわけられない場合に、その代償として代償金が支払われることがあるのですが、これを、保険金で賄うために、保険に入るということです。ただ、あまり高齢になってしまうと、保険に入るのは難しいかもしれません。このような場合は、やはり上記のように、遺言を活用される方が良いでしょう。遺言は、公正証書で残しておくと、無効になるリスクが低く、安心です。
公正証書遺言の解説はこちら

被相続人が公正証書遺言や自筆証書遺言など、遺言を残してくれた場合には、その遺言書をもとに、家族との間で話し合いをすると思います。
しかしその際に誰も遺言の無いように異論がなく、スムーズに話し合いが終われば良いですが、遺留分を侵害される相続人がいる場合など、誰かが納得がいかないということになれば、堂々巡りで解決しないという問題が出てきます。
そこできちんとみんなが納得をする方法で解決をするために、プロの専門家に相談をしましょう。
地域にある弁護士事務所でしたり、プロの相続問題に関する専門家がいらっしゃる事務所を探して、まずは遺言の内容を話します。
すると、各相続人の遺留分がどの程度あるのかという点についての説明が受けられるでしょう。また、遺言の内容と異なる遺産分割協議も有効であることや、ただし遺言執行者が遺言の中で指定されている場合にはそうはいかないことなど、さまざまな関連情報を得ることができるはずです。
普段から何かあれば法律の相談が出来る顧問弁護士のような方がいらっしゃれば、いざという時にすぐ相談出来ますが、なかなかそんな気軽に相談できる弁護士は知らないという場合が多いと思います。
しかし、まわりにそのような方がいらっしゃらない場合にも、あきらめる必要はありません。
まずは、お近くの法テラスの相談窓口を探してみましょう。法テラスというのは、正式名称を日本司法支援センターといいまして、法律に関する無料相談会を実施しています。ここで相談されれば、弁護士さんに無料でいろいろ質問ができます。
法テラス以外にも、市役所などで定期的に弁護士会主催の無料法律相談会などが行われていることはよくありますので、問い合わせされれば、直近の相談会を案内してもらえることでしょう。
ちなみに、紛争となっている遺産分割協議に関して、家庭裁判所で行う調停や審判の手続きを代理することはもとより、裁判所外での話し合いについて代理人となることも含め、弁護士以外の資格者(司法書士や行政書士、税理士など)が行うことは、弁護士法72条に違反する「非弁行為」となり、犯罪行為となりますので、注意が必要です。

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